食材を知る旅 ~プロローグ~
食材を知る旅 ~プロローグ~
さて、旅の楽しみって色々ありますよね。
見ること・知ること・買うこと・それからそれから食べること!
最後の食べることって、旅の楽しみの中でもかなりのウェイトを占めているのだと日々思います。
旅を通して出会う食材についてお話をしていきたいと思います。
私たちの国と全く同じ食材を食している国や地域でも、その調理法が何だか微妙~に違っていたりする事ってあります。
旅に出てみると、不思議と普段ならあまり考えもしない食材のことを少し深く考えてみたり・・・
例えばトマトってどこからやってきたのでしょう?
イタリアという国はパスタソースだとかふんだんにトマトを消費してそうだから、やっぱりイタリアが故郷かな?
いえいえ、決してそうではないのです。
トマトは南アメリカのアンデス山脈の高原地帯が原産です。
だからイタリアでは、トマトが食材として普及するまではトマトソースを使わずにパスタを食べていた?という事になるそうですよ。
私たちの国が室町から戦国の時代に入ろうとする15世紀後半~16世紀、欧州は植民地を求めて大航海時代に突入します。
特に南アメリカ地域にはスペインからの船団がせっせとやってきて、ポトシ銀山の銀やチョコレートの原料であるカカオ、葉巻、それからジャガイモやトマトも・・・様々な物資が欧州へともたらされたのですよ。
でも欧州では、トマトとジャガイモは随分と長い歴史の中で紆余曲折を経験せざるを得なかったのです。
なぜならば、”誰も食べ物としては見向きすらしてくれなかった”のです。
当時の人々にとってみれば、「聖書」にすら登場しないそんな得体のしれないもの、怖くて食べれない・・・そんな感じでしょうか。
だからジャガイモは観賞用の植物程度にしかすぎなかった・・・
でもドイツで、現在のベルリンを中心にした王国(プロイセン)の君主(フリードリッヒ大王)は、ジャガイモを栽培すること・食べることをおおいに奨励(ジャガイモ栽培強制政策ともいいます)したのです。
どうしてでしょう?
それは同じ耕作面積で耕すなら、小麦よりもジャガイモを耕した方がはるかに収穫量が期待できるからですよ。
そうやってジャガイモは、ドイツはじめ北欧州の農業生産性にずいぶんと貢献があったのです。
だからドイツでは、食卓に主菜の添え野菜としてジャガイモがよく登場するのです。
来る日も来る日も、「またジャガイモかァ。昨日もジャガイモだったし・・・・」って感想を言いたくなる時もあるのだけれど。
よ~く観察すると、ドイツはジャガイモの調理法が何だか豊富だし、市場で売られているジャガイモの品種だって日本のそれより明らかに多いはずです。
その国で消費される食材や調理法は、恐らくその土地の風土や環境と密接にかかわっています。
だから食材や普段のお食事をよ~く観察しますと、その土地で暮らす人たちのエッセンスみたいなものが見えてくる・・・とまで言ったら大袈裟でしょうか?
その国の料理って、お口に合う・合わないだけではなくて、深く知ると旅がより一層豊かになると思うのです。
《つづく 次回:あなたとならパンと玉ねぎ》