パトラッシュと歩いたホーボーケンの小径(3)
さて今回は、あのネロ少年が憧れた画家ピーテル・パウル・ルーベンス(1577~1640年)について少し触れてみようと思います。
みなさんは美術館によく行かれますか?
勿論、どんな展覧会が行われていて、どんな作品を見ることができるか・・・
それによって違いますよね。
フィンセント・ファン・ゴッホ(1853~1890年)、ヨハネス・フェルメール(1632~1675年)、それからバロック時代の巨匠ルーベンス。
時代や作風は違えど、ネーデルランド(オランダ・ベルギー低地地方)で活躍した画家の作品展は、日本でも人気が高いです。
時に長蛇の列だって・・・!
西欧の美術作品の主流って何でしょう?
油絵?
油絵(油彩画)の油彩画技法が最初に普及し始めたのは、このネーデルランドにおいてなのですよ。
あのネロ少年が憧れた巨匠ルーベンスが活躍するおおよそ250年前に、絵画技法に油彩が取り入れられるのですよ。
そうして、ルーベンスを持って油彩画の技法は結実の時を迎えるのです。
だから、イタリアだって美術の大輪が華開きし時はあったけれど、フランスの近代絵画だって後世に大きな足跡を残しはしたけれど、油彩画技法の発達はネーデルランドにその原点があるのです。
では欧州の絵画には油彩画(油絵)以外の作品もあるの?
勿論ですよ。
テンペラ画って聞いたことはありますか?
こちらは一種の水溶き画法であったし、地中海沿岸ならばフレスコ画といって壁に漆喰を塗った状態で描く技法も発達しました。
それからそれから、西洋美術って画布(キャンバス・帆布)に描くものって思ってはいませんか?
いいえ!
キャンバスが登場するまで、画家たちは絵の支持体に木材を使っていました。
例えば、フランス・パリのルーブル美術館の至宝、ダヴィンチの『モナリザ』。
あの絵は、絵具は油彩の技法を使ったけど、画布ではなく木材(ポプラ材)を使っているのですよ。
美術館に行った時、作品のすぐ隣にある小さな説明書きを読んでみたりしますか?
そんな小さな説明書きをキャプションって呼んでいます。
何が書かれているのでしょう。
・作品のタイトル
・作者名
・制作年
・どんな絵具(油彩画やテンペラ画 あるいは現代のパステル画)を使用しているのか?
・どんな支持体に描かれたのか?(画布や板など)
その作品に関する最低限の情報が小さなキャプションの中に書かれています。
絵を観るのと同時にキャプションにも目を向けてみると、より深い理解につながるかもしれません。
現代の私たちにとって“絵を観ること”。
それは“美術館に足を運ぶ”という行為に他なりません。
でも、美術館に足を運ぶという「絵の鑑賞スタイル」は、そんなに古くからあったものではありません。
何故ってもとは王侯貴族のコレクションだったから。
大きな世界大戦が終焉して王制から共和制へ、あるいは現代的なモデル国家へと移行していく中で、王室の莫大なコレクションは国がお買い上げしたり寄贈されたものが一般公開されるようになったのですね。
それが美術館。
また一方では、美術はカトリックの教会堂を飾り、薄暗い堂内で「マリア様の静謐やありがたみ」をも演出してきたのです。
ネロ少年が憧れたあのピーテル・パウル・ルーベンスだって、夥しい数の作品を今に伝えているし、教会の祭壇を飾る聖画だって傑作を残しました。
“ ネロが憧れたルーベンス ”
お話しは次回に続きます。
《つづく》