たびさきの マイフェバリット(1)
旅さきの「音」。旅さきの「にほひ」。
日々の生活の中で「ある音」を聞いた時にどこかの場所を思い出したり、「ある香りや匂い」が漂う時に過去に旅行したどこかの国を思いだしたりすることってあると思うのです。
それって予期せぬ時に突然やってきて、私たちに「旅の残像」を語りかけてきたりします。
とある外国からやってきた方がこんな事を言ってました。
「Nipponに到着するとなんだかいつも魚の匂いがする」って、、、。
なんだかあまり嬉しくはないですけど、、、。でも確かにお隣の国、韓国にキムチの匂いを感じる事ってあるような気がしなくもない。
あれは匂いなのだろうか、そんなものには実態らしきものはないから「漂い」に近いものかも知れません。
南ドイツからスイスの風光明媚な山岳地方を目指せば、とっても小さな湖がたくさん点在する山あいをドライブしていきます。
そんな中に深いエメラルド色をたたえたフィーアヴァルトシュタッター湖(長い名前!)って猪苗代湖と同じくらいの湖水面積の湖を通過します。
この湖畔の町がルツェルンという町です。
毎年、夏の終わりにはルツェルン国際音楽祭が開催され小さな町なのに夏のリゾートさながらに賑わうのです。
この音楽祭が終わればとたんに風が冷たくなります。
夏の間、放牧された牛たちがカウベルを鳴らしながら町へと下ろされてきます。
どこの町に行っても朝の散歩が大好きなのだけれど、日本だったら子供たちの夏休みが明けるか明けないかのうちから北ヨーロッパの町々ではコートを用意したくなる朝だってあるんですよ。
通勤、通学の人たちが停留所でトラム電車を待っていたりいたします。
犬の散歩に菩提樹の並木をゆく老ご夫婦が歩いています。
そんな時、彼ら彼女たちから鼻先をツンってかすめる漂いがあります。
それがオーデコロンの香り。
寒気の朝のほうがオーデコロンの香りが冴えるような気がするのですよ。
それで一瞬だけ鼻先をかすめたその香りはどこかへ行っちゃうんですよ。
決して決してオーデコロンはスイスルツェルン固有のものという意味ではありません。
ヨーロッパでも北ヨーロッパの町のほうが何かの拍子にオーデコロンの香りを一瞬、感じることが多いような気がするのです。
オーデコロンの香りと漂いは短い夏を愛しく感じる頃の北ヨーロッパの町の老若男女を思い起こさせるのですよ。
《つづく》
参考
オーデコロンはイタリアから移住した香水職人、ヨハン・マリア・ファリナによって、1709年にドイツ・ケルン発売されたのが起源だとされています。